前日の夕食が中途半端に軽めのものだったので、起床後は勇ましくチャイナタウンへ向かう。
 実は、個人的にチャイナタウンの空気というのがやや苦手である。前回のNYの際に入った店で、サービスとは言えないサービスを受けた時の印象もあるのだが、根本的にここの雑踏感が肌に合わないためである。なので、絶対に行きたいというエリアではない。
 とはいえ、そこに旨いものがあるという話を聞いては無視できない。ということで、そんな旨いものを出すという、"BO KY"なるお店へ向かう。

 まず、鴨のご飯が運ばれてきたのだが、これが値段からは想像もつかない旨さ。鴨肉はジューシー、タレは甘めの濃厚なもの。このタレとタイ米の相性がものすごくいいのである。皮がパリパリした鴨肉は骨の部位もあるのだが、当然ながらしゃぶってしまう。逆に骨なしの部分に当たったときは、一気にご飯と共にかっこむことになる。噛めば噛むほどに鴨の旨みが広がってそれが口の中のご飯と少しずつ絡んでいくのは実に楽しい。また、スープがついているのだが、このスープも非常にダシが効いたものとなっており、このスープが次の麺につながるのである。

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 ここは、日本人にとってチャイナタウンで一番の有名店である、"Joe's Shanghais"の近くにあるシーフードヌードルのお店。店内に入るとやや性格がキツそうな女性が席に案内してくれて、メニューを渡してくれたのだが、その後が大問題。その女性がいきなりサンキストオレンジの缶ジュースを開けて、我々の座るテーブルにて飲みだしたのだ。先に書いたが、個人的にチャイニーズにありがちな「サービスになっていないサービス」は嫌いである。「慣れれば」という感覚はあるのだが、「たいがいにせい」という感覚があるのも事実である。
 そんな中で注文したのは「魚餃河粉麺」という魚のすり身団子のようなものが入った麺と、ローストした鴨のご飯。麺はエッグヌードル(香港のエビワンタン麺の麺としてお馴染みの麺)か、もう一つの麺(どんな麺か失念してしまったが、普通の麺だった気が)から選ぶことができるのだが、ここはエッグヌードルを注文。
 
 さて、旨いものを食べた満足感と接客に対する多少の不満を持ちつつ、デザートを食べるべく向かったのが"chinatown icecream factory"。去年に続いてのお店である。去年はタロイモのアイスを注文したのだが、今年はライチソルベ(4.50ドル)を注文。ライチの甘みが余すところなく入っており、果肉がアクセントとなっている。また、シャリシャリ感が心地よいことや、麺ものを食べてすぐだったということもあって、いいデザートとなった。
 デザートを食べた後は、リトルイタリーをうろうろしつつSOHOへ。以前、ある人から「リトルイタリーには旨い店がない」という話を聞いており、未だにこのエリアで食事をしたことがない。それは一食のボリュームを考えると、ここで食べた結果が優れないものだった場合のダメージが大きいので、試そうとしても試せないというのが実際のところ。果たして真相はいかなるものなのだろうか…

 魚餃河粉麺のスープを一口飲むと、濃厚なのに飲みやすい。正直、例えようがないのだが、じんわりと旨みが広がってきて
くどみがない味という具合。このスープとエッグヌードルの組み合わせというのは、それこそ香港のエビワンタン麺と系統は同じ
なのであるが、こちらのほうがダシやらそこから広がる旨みが一段階濃厚なのである。そして、上に乗る団子の食感は限りなく
こんにゃくに近いもので、この食感とエッグヌードルの食感の妙は面白い。団子自体はスープのエキスを吸うようなものではない
のだが、単純にそれだけで食べても旨いものである。


 この麺のスープと鴨のご飯のスープを飲み比べると、後者のほうがさっぱりしており、鴨のご飯の旨みを消さない程度の味付けの濃度になっているのに対して、前者はスープが主張している。ただし、それはあくまでも麺と団子に対しての土台としてのもので、この辺りのバランス感覚に優れた品である。という以上2品で7.75ドル+チップ。ちなみに、母親は鴨のご飯についていた漬物にほっとした様子。
 と…この値段でこの味ならば、小龍包を食べるよりはと思ったのは事実である。ただし、いわゆるホスピタリティを要求する方には、この店は向かないとは思う(まぁ、どっちの店のサービスも、質そのものはあまり変わらないのだが…)。

 SOHOに到着し、母親の買い物の流れも含めて色々なお店に入る。「家賃が高すぎて住むには適さない」という新聞記事があったりするので、やや物価が高そうなエリアではあるが、実際には数十ドルで服が買えるお店があったりもする。ただ、やはり店のデザインは洗練されているので、服を見ていても飽きることがない。石畳も含めて、この環境はそのままであってほしいものである。
 で、この日は意外に暑く(というより、今回の旅は気温が20度近くまで上昇する日が多く、日本から持っていったコート類はほとんど登場しなかった。)ノドが乾いたので"Dean&Deluca"に入って水を購入。約1ヵ月後がハロウィンだったこともあり、入口に入ってすぐに飾られていたのはカボチャ。ちなみに、こちらで3.63ドルだったミネラルウォーター、日本のDean&Delucaで売っている値段を見たら472円也。
 そんなこんなで買い物をした後は、既に結構な時間となっており、昼食へ向かう。