こむすび割烹 高はし
 缶詰バー「ロックフィッシュ」の入っているビルの5階にある、誠実な雰囲気を持ったお店。店主がちょっと小倉一郎似。
 左上から、りんご酢と鶏肉の和え物、おぼろ豆腐、大皿料理の盛り合わせ、寒ブリ、そばの実入りの大根の煮物、焼き筍、おでん、こむすび。これらは「板長のお任せコース」ということで注文した中で、「寒ブリを出してください」というカスタマイズを施してもらったもの。

 まず、りんご酢と鶏肉の和え物は、きゅうりと角切りのりんごで食感にアクセントを加えたもの。ここに鶏肉が加わると少しクセが強く感じてしまった。やはり、りんご酢自体が強めに味をつけるお酢というよりは、それ自体の爽快感に近い酸味で味わうものだからか。次に、おぼろ豆腐。そのままで食べても十分な大豆の甘みを感じるのだが、塩で食べると豆腐の甘みが引き出されて、更に濃厚に感じる。

 大皿料理の盛り合わせは、この店のカウンターの上にある各種大皿料理を、取り分けてもらったもの。れんこんの肉あんかけ、鶏そぼろが入った卵焼き、こんにゃくとじゃがいもの煮物、ごぼうの揚げ物、さつまいもやニンジンが入ったポテトサラダ。特に印象的だったのが、ごぼうの揚げ物。スジっぽさや余分なクセがなく、油との相性がいい。そして寒ブリ。見た目よりも脂が濃厚ながらも、身はしっかりと引き締まっていた。

 そばの実あんの大根の煮物は、個人的にはこの日の一番料理。あんにしっかりとダシが効いており、その旨みを大根がしっかりと吸っている。また、そばの実の独特な食感が、大根の食感と素敵なコントラストを作っている。水菜が瑞々しさを、カニが味の濃さを加えているのを考えると、そばの実があんの一部ではなく、主役級にもなっているということも面白い。
 そして、まさかの焼き筍。2月中旬に食べたことを考えると、これぞ旬の先取り。シャクシャクした食感と甘みが口に広がる。醤油のほろ苦さも味付けというよりはアクセントとして効果的。おでんは、ダシに練り物の味が加わったという具合の味。厚揚げやちくわの食感が筍の食感と対比した流れを作り出している。

 締めは、このお店の店名でもあるこむすび。一人一つだったので梅干を選んだのだが、単純にお米が旨くて、パリっとした食感としっとりとお米に馴染んだ食感をもつ海苔の味も濃い。梅干もこむすびの上だけではなく、海苔の下にもしっかりと隠れている。

 このコース、一人当たり約4,500円。これだけの種類と実はしっかりとした量のポーションなので、お得感は高い。