廣田
 大井町にある5人で満員のお店。本当に奥まった場所にあるので、初めて行く際には地図が必須。
 左上から、ワニゴチの頭と刺身、真鯛の刺身、焼く前のレンコ鯛と焼いたレンコ鯛、平スズキの頭と刺身、ホウボウの頭とグリル・ジャガイモ黒トリュフ、そして締めの一品。

 今回は、店主から「岩牡蠣と平スズキのいいのを仕入れることができる」というお話をいただいたので、カキタベニスト全員で訪問。調理が始まる前に、今日使う魚の頭と全体を見せてもらいつつ説明を受ける。この日は長崎の五島列島にて獲れた魚を中心とした、オール九州もの。まず、最初に出された生岩牡蠣についてはカキタベ!に譲ることに。

 次に出されたワニゴチの刺身は、自家製のポン酢とあさつき、そして、紅葉おろしが添えられたもの。頭の見た目とまったく違って、弾力のあるプリプリした食感に溢れており、噛めばほんのりとしたコクと甘みを感じる。この味を手作りのポン酢の酸味が上手く馴染むことで引き出されている。

 次の真鯛の刺身には、塩、わけぎ、そして柚子胡椒が混ぜられたものが乗せられている。口に運ぶと、柚子胡椒の香りが広がり、噛むことで引き締まった身から出てくる甘みを、塩がほどよく組み立てている。個人的には、この上品な組み合わせは旨い以上に、自分が好きな味というもの。

 レンコ鯛の焼かれたものには、生醤油と山椒がまぶされている。クシュクシュした食感の後に旨みがじんわりと広がる。そこにメリハリのある生醤油の濃さと山椒の爽快感が一致する。皮が持つうっすらした脂感も申し分なし。

 そして、平スズキ。活〆め5キロものの平スズキをさばいたものは、向かって左側が背の部分で右側が腹の部分。同じ魚にしても部位が変わるとこれほどに味の性格が変わるのかという具合に、背中はさっぱりしつつ徐々に旨みが広がって、腹部分はこの旨みに更に甘みが加わって、旨みの幅が一回り広がった味。食感にしても背中はコリコリに近いものを持ち、腹はとにかくモチモチ。鎌倉産の大根のツマの味も甘く水々しい。

 ホウボウのグリルは皮面だけ焼いたもの。この土台として組み合わさっているのが、じゃがいものペーストに黒トリュフを組み合わせたもの。しかも、ペーストにも細かく刻まれた黒トリュフが和えられている。ホウボウがふんわりして皮もパリパリ。ここに黒トリュフジャガイモの濃厚な味が加わる。味の濃淡の組み合わせとして理想的。

 そして、ここにもう一品岩牡蠣の料理が加わり(これはカキタベ!にて)、締めの一品として出されたのは、これらの魚の頭や骨で取ったダシを元にした澄ましを作り、これにデュラム小麦を米の代わりに入れたもの。じんわりと上品に魚の旨み全てが含まれた澄ましが旨くて、これに濁らない小麦が加わっているので、澄ましの味が濁ることなく最後まで味わうことができる。しかも、弾力に溢れた小麦の濃厚な味もここに加わるので、全てにおいて満足のいく一品。

 この店の一番好きなところは、想像もつかない組み合わせで想像もつかない味を、いとも簡単に作り上げるところ。旨いものを作るのに、お店の大小や立地なんて関係ない。完全予約制だったり、多少値段が張るのだが、その価値は十二分にある。