日本橋ぼんぼり 京橋店
宮崎地鶏を中心に据えた、お肉料理中心の創作料理店。
 左上から、お通し、地鶏と白レバーのテリーヌ、桜肉のタルタル自家製パン添え、沖縄アグー豚を泡盛を練りこんだパン生地で蒸したという料理、豆パイン焼酎、炭火焼地鶏とキノコのカルボナーラ、梅酒ワイン、地鶏の南蛮タルタル、地鶏旨油飯とその具材、エスプレッソのセミフレッド。

 お通しはひじきの煮物とビシソワーズなのだが、後者は牛蒡と思われる根菜の風味が効果的。そして、まとめて注文。ここはそれほど料理が出てくるスピードが速い店ではないので、まとめて注文したほうが得策か。

 地鶏と白レバーのテリーヌは、地鶏本体の味が前面に出ており、それにレバーの濃厚な味が上手く組み合わさって、お互いの長所を引き出しているというもの。テリーヌの上に乗った、リンゴのジャムのようなモスタルダなるものがソースの位置づけになるのだが、単純にテリーヌとの相性もさることながら、パイとの相性がいい。
 
 桜肉のタルタルは桜肉の食感がものすごくたくましい。噛めば噛むほどにじんわりと旨みが広がる。元々、脂身うんぬんという肉ではないので、不足分を補うためのソースが重要になるのだが、これらは全てパンに乗せて丁度いい塩梅になるというものになっている。パンの枚数が枚数なので「少ないかもしれない」という桜肉の量で食べるよりも豪快に乗せて食べるべきだと思う。まぁ、桜肉の食感を考えると、あと2枚ぐらいパンがあればと一番ありがたいのだが。
 
 沖縄アグー豚の料理は、実は裏メニュー。水曜日にアグー豚が入荷したという話を知って、この日(金曜)に食べたいので取り置きしてほしいと連絡したところ、まだ量があるのでOKという話になった。で、食べ方として「トンカツですよね?」という話をしたところ、別のメニューがあるということでそれでお願いしたのがこれ。正直、パン生地を使って蒸すという話を聞いたものと、このお皿に乗った料理の間にはギャップがあったのだが、食べてみて驚き、もの凄く旨い。脂身は弾力があり噛んでも噛んでもその旨みが絶えない。こんな食感の脂身は初めて。また、赤身も非常に上品な味わい。余分なクセや臭みなんていうものがなく、ジューシーな仕上がりになっている。自分は飲めないのだが、焼酎向けのメニューと思われる。

 焼酎を飲めないとはいえ、カクテル系になると多少は飲めるので豆パイン焼酎という、豆乳とパインジュースで焼酎を割ったものを飲む。パインというよりは豆乳のコクが主導のもので、そこにパインの甘さと酸味による飲みやすさが加わっている。

 炭火焼地鶏とキノコのカルボナーラは、コッテリ系のカルボナーラではなく、鶏のあっさりとしたスープにクリームが組み合わさっており、そこにリングイネを絡めて地鶏焼きとキノコが組み合わさったというもの。なので、濃厚ではあるのだがそれはクリームによるものではなく、しっかりとした鶏の味による濃厚というもの。リングイネの茹で加減もアルデンテ。ただ、スープ系のカルボナーラなので、ものすごくクリームとパスタが絡むというものではない。むしろ、地鶏の肉とリングイネを一緒に食べて噛んでいるときに広がる味が印象的。ちなみに、皿に残ったソースだけお皿に移して少し飲むと、やはりこれはこれでもの凄く濃厚なのに飲みやすいというものになっている。

 梅酒ワインは梅というよりはワイン主導。ただ、これも非常に飲みやすい。ワインは苦手なのだが、こういった酸味とかで飲みやすくなっているのがありがたい。

 地鶏の南蛮タルタルは、とにかく肉がジューシー。パリパリの皮とじんわりとした身の味をタルタルソースと酸味の効いた野菜が全部引き出している。

 地鶏旨油飯は、煮切り醤油がかかってネギが乗ったご飯の中に地鶏の脂身を固めたもの(とはいえ、テーブルに運ばれてきたときには既に溶け出していたという、極めてデリケートなもの)とミョウガの細切りを入れて、脂身をご飯の熱で溶かしつつ混ぜて食べるというもの。地鶏の脂身のコクもさることながら、これはミョウガのアクセントが極めて効果的。これがないと少しだけしつこさが勝ってしまうと思う。

 デザートはエスプレッソのセミフレッド。セミフレッドとはホイップクリームベースの生地を、冷凍庫に入れて固めるアイスクリームのこと(セミが「半分」を意味し、フレッドが「凍った」という意味になる)。食感はシャクシャクしたもので、アイスクリームに比べると非常に食べやすい。これにエスプレッソが配合されており、本体のほのかな香りと苦味が上にかけられているカラメルの苦味という、2種類の苦味が上手く重なっている。

 とにかく、高次元で旨いものを出してくれるお店である。ちなみに、個人的にオススメなのは桜肉のタルタル、沖縄アグー豚を使った料理(今後は仕入れが比較的安定するらしく、店に出る機会が増えるとのこと)、地鶏の南蛮タルタル、そしてセミフレッド。