マヌエル
 ネット検索で「東京 ポルトガル料理」として検索すると、最初に出てくるのがこの店名。今回は四ツ谷店。
 左上から、前菜のオリーブとパン、豚の耳とソラマメのサラダ、バカリャウのコロッケ、タコのご飯、「アルフェイゼラオン風パォン・デ・ロー」、「らくだの“垂涎”」
 
 数日前にこの方と、この方と自分の3人で座席予約をして当日を迎えたのだが、店内に入り案内された席が入り口に最も近い席。しかも、この席の通路を挟んで隣がワイングラスやレジスターが置かれているので、正直、あまり落ち着かなかった。

 まず、食前酒ということで、ワインリストからワインを注文したのだが、店員さんに確認すると1尋ねて7返ってくるぐらいに反応が多い。自分みたいなワインをほとんど飲まないし飲めない人間にはいいのだが、ワインをある程度飲む人にはやや耳に障る部分もあるのではと思った。

 ワインが運ばれてくると同時に、前菜のオリーブとパンが運ばれてきた。パンは至って普通のものなのだが、オリーブは食べると「グニュ」という食感と共に、じんわりとした果肉の味が広がる。ワインについては、本気で詳しさも何もないので「飲みやすいスパークリングだった」としか言えないのが悩ましい。次に運ばれてきたのがサラダ。豚の耳の食感がコリコリと心地よく、ソラマメの味もしっかり。これにオリーブオイルによる適度なさわやかさと、細かく刻まれた他の野菜が組み合わさることで味の密度を高めていた。

 そして、バカリャウのコロッケ。バカリャウとは干し鱈のことで、噛むと最初はふんわりした口当たりなのだが、噛んでいるうちに、鱈の繊維質が中心とした食感となる。油があっさりしていることもあって、全体にあっさりとした味。そして、タコのご飯は蓋付きの土鍋で運ばれてきた。蓋を取って取り分けて一口食べると、タコの食感がクンクニしたものではなく、とてもやわらかく煮込まれていた。この味がご飯全体に伝わって、トマトの酸味によってさっぱりと食べさせるというもの。

 タコのご飯もサラダもバカリャウのコロッケも全部食べたところで、デザート2品を注文。ただメニューに書かれた名前を見ただけでは、何がなんだかという具合のものだが、前者がカステラの起源となったもので、後者がオリジナルのムース。

 「アルフェイゼラオン風パォン・デ・ロー」は、非常にクリーミーなカステラ的なもの。言い換えると半焼きのカステラなのだが、この半焼きの部分が全部焼かれたときに比べて糖度が高く感じて、スポンジ状となった部分との組み合わせが面白い。ただ、半焼き的なものゆえに、粉っぽさも残っている。一方、「らくだの“垂涎”」は、よだれをメニュー名に据えたすごいお菓子なのだが、正体はムース。ナッツとカラメルとコンデンスミルクによるムースは、非常に濃厚。

 と、意外に品数少なく終了。その理由は色々ある。一つは、ポーションの小ささ。すべてのお皿の直径は約15センチ程度。これを3人で食べても「なんだか…」という具合。また、ワインのボトルが空いたときに、店員の「もう一ついかがですか?」という誘いが正直しつこかった。アルコールものは人それぞれなので、ここは飲む側のペースに任せてもらいたい。そして、ポーションの大きさの割りには、やけに強気な値段設定。タコのご飯は直径15センチ程度の鍋で1,730円。ランチじゃないのでコスパうんぬんという話はしたくないが、経験値を得る以外に自分で行くことはないかもしれない。