朝食。今回の旅行では朝食もここでこれを食べるというのを、ある程度は決めていたのだが、実際には前日の食事による満腹度や、天気や起床時間等のコンディションによって、その予定はガラリと変わってしまう。
 この日の朝食も例に漏れず、ホテルの近くにあったスタバへ。シーズンものとしてカボチャが題材になっていたので、”pumpukin latte”、”pumpukin doughnut”というカボチャもの2つと、エスプレッソのダブルとターキーサンドを注文。
 パンプキンラテは胃の底に染み渡るようなやさしい甘さで、朝のドリンクとして「こうあってほしい」というものを満たしている。ただ、ドーナツは普通で、エスプレッソも”Printon56”と比べると少ない。こうなると、ホテルの近くにあった”Jamba juice”なる生ジュースのお店のほうが、現地でも流行中だっただけに、経験しておけばよかった…
 食後は、グラウンドゼロへ。いつでもこのエリアには人が大勢いる。一人一人の正確な気持ちはわからないけれど、やはり一人一人の視線の先には、9・11のあの日の出来事がある。自分はこの映像をニュースステーションで見て、そのことをすぐに職場の人間にメールで伝えたら、最初は本気に取ってもらえなかったことを覚えている。
 今でも、ここでそんな出来事があっただなんて信じられない。そのぐらい、自分にとっても現実的じゃない現実の出来事だった。ここに来るのが初めてだった母親も、ここでそんなことがあっただなんて信じられない様子。当事者にならないと理解することができない出来事。けれども、みんな知識という形だけでは理解している。
 その時に大切な人を失ってしまった人が持つ時計は、いつになったら再び動き出すのだろうか。
 その後、トリニティ教会→ウォール街と回って、自由の女神を見るべくバッテリーパークに行こうと思ったのだが、変な道路工事に巻き込まれて、いつの間にかバッテリーパークから離れてしまい、やや離れた所から自由の女神を見ることに。とはいえ、印象に残っているのは船が引っ張る島の画なのだが…。
 その後、タクシーを捕まえてサウスストリートシーポートのアバクロへ。今回こそアバクロでしっかりと洋服を買おうと思ったのだが、またもやサイズ問題が発生してしまい、今年も香水とアクセサリーの購入にとどまる。一方、母親はしっかりとサイズが一致したので、パーカーとインナーを1枚ずつ購入。うらやましい話だ。
 そして、この旅の最大目的の一つである”Peterluger”へ。実は、旅行前に一番がわかりづらかったのが、この店への行き方である。「危険だ」情報は満載だったのだが、肝心なルートについてはあまり詳しく書いてあるサイトがなかったので、しっかりと書くことに。ちなみに、ランチであれども一応予約は入れてある。
 マンハッタンから行くにはJ・M・Zの路線に乗り、ウイリアムバーグ橋を渡る。で、渡ると電車の右側の窓から店の看板が見える(写真のクリーム色の背景に茶色のバックで文字が抜いてあるのが看板)。そして、Marcy Av
で下車。一番マンハッタン寄りの改札から地上に降りる。
 地上に降りたら、高架沿いにマンハッタン方面に歩くと左の写真の場所に出る(日中であれば、地上に降りるとこの場所が見える)。で、これを更にまっすぐ進むと電車の窓から見えた看板が書かれた建物に到着。
 ところが、これはピータールーガーではなく看板が描かれているだけの建物。この建物がある交差点のはす向かいにようやく見えたのがピータールーガー。
 店内に入ると、ものすごく紳士的な店員さんに案内されて、1Fの奥の部屋に案内された。マンハッタンの喧騒とは正反対の趣きを持った店内ではったのだが、なぜか冷房の効きが強く、正直寒かった。ちなみに、ドレスコードという視点で見ると、昼間だったせいもあるのだろうか、スニーカーとカーゴパンツでも入ることはできた。
 メニューを見ると、下調べのとおりにステーキは1人前から注文可能。また、ランチ限定のハンバーガーもメニューにはしっかりと掲載。ということで、この2つとダイエットコークを注文。サラダ類やデザートは注文しなかったのだが、サラダもデザートも量がべらぼうにあるということなので、最初はメインだけという展開で。
 まず、パンが2種類運ばれてきたのだが、このパンが旨い。オニオンの香ばしさが効果的なパンは、やや厚めの皮とモチモチした中身であり、これだけでも楽しめる。もう一種類のケシの実がまぶされたパンも旨かったのだが、正直なところオニオンのパンの印象が強すぎた。そして、ダイエットコークが出てきたのだが、なんと200mlぐらいの小瓶。便の大きさまで伝統的というのは悩ましい…
 そしてハンバーガーの登場。厚さ3センチ近くのレアで注文したパティは、上等な赤身を使ったもの。なので、肉汁で味わうというよりは、噛んで噛んでまた噛むと、旨みがじわりじわりと広がる。そして、それをバンズが拾うというもの。赤身好きの自分にとっては非常に満足のいく一品。レアでありつつも、余熱である程度は熱が通るので、妙な生感も皆無。また、焼けたチーズの食感とクセも肉に変化を与えるという意味で、いい仕事をしている。付け合せのポテトもポテトそのものが甘いので、多少の塩分だけで十分なぐらいの味である。
 と、ハンバーガーを堪能していたら、いよいよステーキの登場。ここのステーキはポーターハウスという、いわゆるTボーンステーキ。ただ、サーロインのほうが大きくカットされているのが特徴的。
 まず、大皿に乗ったステーキが運ばれてきて、これを店員さんが食べやすい大きさにカットしてお皿に乗せてくれる。そして、大皿の底にたまった、肉を焼いたときにあふれ出た肉汁が含まれた脂をかけて食べるのが基本形。また、日本では賛否両論のピタールーガーステーキソースをかけて食べたり、注文すると出してもらえるという裏メニュー・醤油をかけて食べる。
 とはいえ、肉だけで食べて思ったのが、こんなに旨い肉を食べたのは初めて。噛めば噛むほどにジュワジュワと肉の旨みが広がる、とにかく広がる。そして一切れ食べただけでこんなに満足度が高まるのかと思えてしまう。はっきり言って、霜降り派には向かない味ではある。ただ、赤身派にとってはこんなに旨いステーキはないと、自分は思う。店員さんが切り分けた肉を食べ終わったら、あとは自分のペース。好きな大きさに切って、好きなだけ脂をかけて(あまりかけすぎるとどうしようもないが…)好きなだけかぶりつく。焦げなんてまったく気にならない、最高の味だ。
 ちなみに、ステーキソースはパンにつけて食べると、意外に合う。これはバーベキューソース的な味になっているためであり、ソースそのものが旨くないというものではない。ただ、確かに好き嫌いははっきりする味ではあるが…以上、$53.48のランチは一生の思い出になる味だった。ちなみに、支払い方法は現金のみである。
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