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2006年06月04日

青森出張シリーズその4 〜野辺地・「小料理乃さか」で食べる郷土料理〜

 これはランチの話ではないのだが、あまりに印象的だったので記事にまとめることに。

 今回の青森出張の拠点となったのは、八戸駅から特急に揺られること約40分で到着する、野辺地(のへじ)町という町である。

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 基本的にローカル色に溢れる町なので、駅舎を出ても大きな商店街があるわけではなく、お土産屋さんやレンタカー、または「駅前食堂」という色合いの飲食店が、点在しているという印象だ。

 そんな町で食べる夕食として、現地の方につれて行ってもらったのが、駅から15分程度歩いて辿り着く「本町」という、町一番の目抜き通りのエリアにある、「小料理乃さか」というお店。

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 今回、お店にて食べた料理のテーマは「東京で食べれないもの」。まさに出張時にうってつけの料理である。で、事前に連絡をしていたのでテーブルには様々な料理が、既に用意されていた。

・フキの味噌和え
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 正直、自分はフキの独特なクセがあまり得意ではないのだが、一口食べて感じた印象として「シャクシャクと水々しい食感」というもの。味噌の味が過度にするのではなく、フキのスッキリした味を、一層くっきりさせるための味噌という味付けとなっている。

・ワラビの辛子醤油和え
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 山菜はこのあたりでは豊富に採取できるので、すぐ近所の敷地とかでも採取できるぐらいに、普段着の食材である。どうしても東京で仕事をしていると、山菜おこわとかに入っている気合に欠ける山菜のイメージが強いのだが、これは見た目から既に美味しそうなオーラをかもし出している。

 辛子を醤油に溶かしてワラビを浸して食べると、しゃっきりした皮の食感に続いて広がるネバネバ感が豊富な味。また、辛子醤油との相性も、辛子のすっきりした辛味によって醤油が主張するのではなく、上手くネバネバ感に溢れるワラビの味を広げてくれる。正直、こんなに旨いワラビを食べたのは初めてである。

・ホタテの酒粕和え
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 一つ78円ぐらいで殻つきが売られていたり、お土産屋さんにホタテサブレなるものが売られているぐらいに、ホタテは野辺地町の名物である。さて、この酒粕和えはホタテに緑ものを加えて、そこに酒粕を加えて和えたものなのだが、やはりホタテの柔らかな食感が実に印象的。また、酒粕との相性もよくお酒のアテとしては、うってつけと思われる。

・燻製5種
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 燻製は豚の三枚肉、鳥、氷下(かんかい)、ホタテ、そしてイカの5種類。豚の三枚肉は素直に肉が欲しくなる力強い味わい。鳥はパサパサ感がなく、旨みがぎゅっと凝縮されているので、噛めば噛むほどに味がじんわり広がる。

 かんかいは、タラ科の魚でコマイとも呼ばれるもので、この名前は氷の下で産卵することからついたものとのこと。見た目には多少食べにくさを感じてしまったのだが、食べているうちにいつの間にか一匹終わっていた。香ばしさから始まる旨みが、鳥肉以上にぎゅーっと凝縮されているので、燻製にすることでより一層旨みが引き出されたという印象。

 また、ホタテは和え物と違って生食用を直接燻製にしたものなので、非常に大ぶりなものとなっている。とはいえ、味は大味ではなく重厚感に溢れつつ、個々の部位がしっかりと主張した味が、燻製されることによって、統一感を持った深い味となっている。ここまで、ほとんどお酒を飲まずに食べているのだが、これもお酒との相性がよさそうである。

・鮭と牛肉の燻製
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 こちらも燻製。鮭となるとどうしても北海道のイメージが強いのだが、青森でも奥入瀬川に鮭が遡上してくるので、地物の鮭を食べることができる。ちなみに、野辺地町ではないのだが、流域の下田町では鮭のつかみどり祭りというイベントも開催されている。ということで、当然ながら鮮度抜群の鮭なので、身の弾力がすばらしく、これも燻製にすることで旨みが一層深くなっている。

 一方、牛肉についてだが、青森には田子牛(たっこうし)、十和田牛、そして幻に近いぐらいに数が少ない倉石牛と、数多くの銘柄牛の産地でもある。今回はどの牛かを聞かずに勢いで食べてしまったのだが、旨みは凝縮されており、霜降りのように脂の味しかしない肉ではなく、しっかりとした赤身だけが作り出せるジューシーな味。

・山菜の和え物6種
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 手前から時計回りで、「うるい」と小女子を和えたもの、セリと凍り豆腐、「としあごう」の上にクルミをまぶしたもの、「うるい」と酒粕を和えたもの、山フキとみがきにしん、そして、真ん中が「あざみ」のくき。

 正直、自分でも書いていて何がなんだかという感があるぐらいに、山菜の種類というのは本当に豊富なものであるが、青森の場合はその辺りの土地に生えている山菜も旨ければ、山地が豊富な土地柄ゆえに種類が豊富という面もある。

 さて、「うるい」とは青森の方言で「オオバギボウシ」という種類のことを指す。この皿に二種類の料理が使われているように、クセがなく非常に扱いやすい山菜である。その食感はまるでアスパラのようで、食感の後に広がるのは独特のぬめり。これがなんとも言えない。

 セリと凍り豆腐は、最初の口当たりは意外にあっさりした味わいなのだが、一気にホロ苦さが口の中に広がる。好きな人にとってはクセになるであろう味である。

 「としあごう」は、実は地元の方からはこう聞いたのだが、調べてみるとこの名前が方言なのか正式名称なのかが不明。味としては非常に苦味が豊富な味なのだが、クルミの香ばしさで緩和される組み合わせ。

 山フキは、みがきにしんと一緒に炒められたもので、ピリっとした辛味が加わっている。相性の良さに妙に納得してしまった。

 そして、「あざみ」はこれが正式名称。茎の部分を調理するもので、今が旬ということもあり、これも濃厚な味。これらは地元の方にとっては「当たり前のように食べている」ものとのこと。単純に、味が濃い野菜を食べるということが、贅沢なことだと自分では思っているので、本当にうらやましい限りである。

・クロダイの刺身と皮を炙った刺身
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 青森の魚となると、今では「大間のマグロ」という連想が一番ポピュラーと思われるが、クロダイも豊富に生息している。ということで、刺身と皮を炙った刺身を頂いたのだが、前者はモチモチの食感から広がる甘みがたまらない。また、皮を炙った刺身は、普通の刺身に加えて皮のコリコリした食感と身の食感の違いに、メリハリと楽しさを感じる。

 また、シソの葉についても土地の性質のせいだろうか、爽快感というよりは、濃厚な余韻を感じさせる味となっている。

・小蕪、焼きネマガリタケ、にお、みょうがを味噌で食べる
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 そして、これが今回の出張で一番印象に残った食材であり、印象に残った味である。

 小蕪は4〜10月に旬を向かえるもので、この辺りでも青森市内に流通してしまうことが多く、なかなかこういった形で食べることは少ないとのこと。で、これをどうやって食べるのかというと、

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 こうやって、皮をむいて丸かじりするだけ。いたってシンプル、でも一番旨い。食感は柿のようにザクッとしており、繊維に沿って綺麗に割れる。そして、噛むとこれも柿や梨のようにやさしい甘さと、水々しさが口の中に広がる。

 また、味噌をつけると味噌とのコントラストが、見事に展開されるのだが個人的には、そのままの味を豪快に味わいたいものである。

 ネマガリタケは山の斜面に生えている山菜で、太陽の方向に向かって延びる際に、曲がって生えることからこの名前がついている。これを焼くことで中が蒸し焼きのような状態になるのだ。

 皮をむいて食べると、今度はとうもろこしのような甘さが広がり、ほんのわずかながら苦さも感じるのだが、それも心地よくなる。また、これは味噌をつけることで一層甘さが際立つので、欠かせないところ。

 ちなみに、小蕪とネマガリタケに夢中になっているうちに、「にお」(セロリのような味らしい)とみょうがを食べるのを忘れてしまった…

 こうして、様々なものを頂く機会に恵まれて思ったのが、

 「現地で食べないと、現地のことは分からない」

 という、シンプルな答え。野辺地という土地のいい部分も知らなかったかもしれない。ただ、知ってみると、こんなに青森というのは美味しいものずくしの県であるのかと、その力に圧倒されてしまった。

 反面、こんなにいい素材を持っているにもかかわらず、知名度がそれほど高くなってないという現状については、残念としかいいようがない。

 ただ、自分に言えることは、「食べ物だけの目的でも一度足を運ぶべきである」ということ。りんごもマグロもなくても十二分に満足できるのだから。

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カテゴリー : [ その他 ]  記事の編集 takapu : 2006年06月04日 19:42

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コメント

 【霞町さま】

 すーーーーごくお久しぶりです。

 今回の食材との出会いは…奇跡ですね。本当に美味しかったです。今でもワラビの食感やカブの水々しさを思い出すと、幸せになれます。

 ホタテも美味しかったですが、今度は生か単純な網焼きで食べてみたいものです。

投稿者 takapu : 2006年06月06日 00:47

私も野辺地に出張でいきましたが、貴兄みたいに
いいモンは食わしてもらえませんでした。。
ホタテは送ってもらって食べましたが美味しかったですね〜。

投稿者 霞町 : 2006年06月05日 10:17

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