で、問い合わせたところ、本来は夜のメニューとのことなのだが、お店にどうしてもどうしてもと頼み込んで、なんとかありつくことに成功。

　で、当日。店内に入って、まず運ばれてきたのが、自家製パン２種と定番のジャガイモのペースト。この日のパンはカンパーニュと、トマトのパン。トマトのパンは、口に入れた瞬間にトマト感を上回る香草の香りと味が広がり、重さを感じることなく、すっと身体に入っていく。また、あっさりしたパンなので、甘みとコクのあるジャガイモのペーストとの相性がよく、しっかりした味の足し算となる。

　そして、パンを食べ終わってしばし待っていると、なぜかスプーンが運ばれてきてから、ナヴァランが運ばれてきた。

　約34センチぐらいの楕円形プレートで運ばれてきたこの料理、想像していた以上のボリュームと、想像以上の豊かな香り。食べる前にこれだけ迫力を感じさせる料理は、自分にとっては初めてである。
　
　さっそく、ナイフで骨から肉を落とすと…

　ホロっと簡単に取れてしまった。そして口に入れる。強い弾力ではなく、しっかりと煮込まれたことによって生まれた柔らかい食感。首から肩の部分の肉そのものの味と、これをじっくり煮込んだことで、エキスがしっかりと染みこんだソースが組み合わさった重厚な旨み。脂身部分が作るコクも申し分なし。

　そして、この子羊のエキスを、十二分に吸い込んだ煮汁で煮込まれた、ニンジン、大根、ブロッコリーなどといった野菜は、豊かな肉の旨みと、野菜自体の絶対的な味が一体になって、なんとも贅沢な味。ボリュームある皿なのに、ナイフとフォークは止まらない。

　また、皿の端にかけられたバジルのオイルとこのソースを、皿の上で和えてスプーンで口にすると、濃厚な味に絶妙なアクセントを感じさせる味。このソースを絡めて食べるインゲンやエンドウマメも、申し分なし。肉の勇ましさと野菜のやさしさを両方持ったこの一皿、とにかくすごい。　

　食べ終えた満足感に浸っていると、このお店名物のワゴンサービスで、デザートが運ばれてきた。そこで選んだのは、エクレア、パインのタルト、そしてバン・ムースのゼリーと桃をあわせたもの。

　バン・ムースとは、シャンパーニュ地方以外の、フランスの地方で作られたスパークリングワイン。ゼラチンの弾力が利いたものではなく、桃をやさしく包み込んでいるというもの。自分は下戸なので、ワインは本当に経験値が少ないのだが、ブドウの香りやフワっとした味、そして酸味が
桃の甘みと一体になった味。

　パインのタルトは、コンポートになったものが乗っている。これによって酸味は消えて、果肉の食感や甘さが前面に出ており、タルトとの甘さの階層が心地いい。

　そしてエクレアは、上にかかったカラメルの味が印象的。シュー皮の強さとクリームのやさしさを、ホロ苦さで大人仕立てにしている。そして、口の中でクリームとカラメルが一体になった時、更なる味のコントラストが生まれる。

　これだけ旨いものを食べて、元気にならないとしたら申し訳なく思えるぐらいに、後ろから一押ししてくれる。やっぱり、そんなお店って素敵である。

--------------　

　今日もご覧いただきまして、ありがとうございます。ご支援がてらに人気blogランキングも、ぜひご覧ください。