まず、一番ベーシックな満月から。

　食パンの生地をそのまま生かしたシンプルな作りとなっている。口に入れる寸前に生地の香りがふんわりと広がり、食感も空気感に溢れたものから、しっかりとした弾力へと変化する。そして、舌の上に置いているうちにコクと甘さが広がる。

　次にクリームパン。

　厚さ約１．５センチのクリームがつまっている。パンの本体は満月よりも少しぎゅっと凝縮されたような作りで、生地そのものは前面には出ていない。ただ、クリームはゆるさを感じないしっかりした作りで、表現として適切かどうかは別として、大胆に作られている。この大胆さがあって、「作りものの甘さ」ではなく手作りの甘さを持ったクリームとなっている。最初は甘さを感じないものの、後味がしっかりとしており、長く余韻を感じさせる。プリンのカスタードを食べている感じに近い。

　ここからはハード系。

　あんずショコラは、皮がしっかりと力強いハリを持っており、ちぎって構造を見ると、皮のすぐ下にはチョコチップがぎっしりと詰まっている。そして、更にその下にある丸い生地の中に、あんずが入っている。チョコの甘みが濃厚なので、生地の力強さに負けておらず、非常にいいバランスとなっている。また、あんずも甘酸っぱさがパンに包まれることで、食べる前にチョコに染まることがなく、その味がしっかりと残っている。そして、口に入れたときに初めてチョコと一体となり、その組み合わせが絶妙。お互いの長所を上手く引き出している作りとなっている。

　そして、クルミとぶどう。

　単純に、１５センチクラスでありボリューム感溢れる外観なのに、この価格なことに好感。ずっしりと重たいパンを割ると、ぎっしり詰まったクリームチーズ。このチーズが過剰な酸味を感じさせず甘めの作りとなっているので、ブドウの甘酸っぱさと対比関係ができている。最初は、チーズのコクと甘さが主導ながら、次第にぶどうの味が浸透してきてその流れでクルミの香ばしさとコクが、効果的な土台となっている。そして、ここまで濃厚な一連の味の流れを上手に包み込んでいる生地も、「バリッ」という力強い噛み心地と、いい意味での自己主張がしっかりされている。

　最後に食べたのはカレーパン。

　かなり立体的なフィリングが印象的。この自家製のカレーにはいたずらに過剰な辛さといったものはなく、じゃがいも、ニンジン、玉ねぎといった一種の王道のような具の味がしっかりと伝わってくる。そして、生地とのバランスがしっかりと取れているので、個人的にはある種、新鮮な味に感じた。また、揚げてあるにもかかわらず、生地にはしつこさは皆無。これが食べやすさにつながっている。

　と、こんなに食べても、店頭に販売されていたものの一部に過ぎない。豆大福のような外観の「豆あんぱん」や、黒糖ツイスト、そしてカツサンドといったものや、バゲット、食パンの類。とにかく無数にあるパンを見れば、ショーケース前で悩んでしまうことは確実。

　ちなみに、今日と明日は開店１周年記念ということで…

　オレンジピールの酸味が効いたフィナンシェと、濃厚なマドレーヌがプレゼントとして用意されている。店頭には並んでないものとのことではあるが、こちらも手作り感に溢れた味。いやぁ、今日でよかった…

--------------

　いつもご覧いただきまして、ありがとうございます。ご支援がてらに人気blogランキングも、ぜひご覧ください。